キッチンのカウンター(ワークトップ)素材の種類と選び方
キッチンをメーカー規格品から選ぶ場合であれ、オーダー造作する場合であれ、キッチンカウンター(ワークトップ)の素材選びは悩ましい事です。
市場には様々な素材や柄が溢れており、多くの中から選ぶ基準もキッチン作業をする場という「機能性」と、LDK空間つまり住空間の中心的存在であるキッチンは住空間のインテリアを決定づける要素で特に平面方向で広い面積があるキッチンカウンター(ワークトップ)は目につく存在で、床、壁、天井、及びキャビネットとのコーディネートも重要な「デザイン性」もあるからです。
しかも、素材は「機能性」「デザイン性」「コスト」はある意味相反する事であり、ある種の割り切りも必要になってきます。そんな選定が難しいキッチンカウンター(ワークトップ)の素材選定する上で、まずどんな素材があるのか?その特性、差異性を知って置く事が大切になってきます。
▽キッチン関する記事も併せてご覧ください。
【目次】
・人工大理石
・人造大理石(クォーツ)
・セラミック
・ステンレス
・メラミン化粧板
・木材
・その他
1:どんな素材があるのか?
・人工大理石
アクリル樹脂を主成分とした物、ポリエステル樹脂を主成分とした物に2種類があります。
ポリエステル系人工大理石は主に金型でカウンター形状(前垂れやバックガードなど)に加工され、厚みも4㎜から6㎜ぐらいでコストが安くメーカー規格品のキッチンのローコストから普及価格帯のキッチンに採用されています。金型で制作する為に自由な形状のカウンターには向いていません。
アクリル系人工代理石は厚みが10㎜から12㎜の平板を一点一点カットし接着してカウンター形状(前垂れやバックガードなど)に加工されます。一点一点手作業で加工するのでコスト高ですが、サイズや形状は自由にできます。ポリエステル系人工大理石と比べて熱に強く変色しにくい特徴があります。素材メーカーブランドとして「CORIAN」「HI-MACS」があります。
弊社のように一点一点オーダーキッチン、オーダー洗面化粧台を製作する場合はポリエステ系人工大理石ではなくアクリル人工大理石を採用しております。
【アクリル人工大理石の特徴として】
・単色白〜天然石風など柄は豊富で50種類以上あります。但し価格は一番安い柄と高い柄では2倍程度の価格差があります。
・素材が柔らかく加工が簡単で、ジョイント部分をシームレースで繋ぎ合わせる事が出来るので例えば搬入できない10mほどの長さのカウンターを分割して搬入して設置して現場で繋ぎ10mの一枚カウンターのように見せる事ができます。(但し陰影の濃い柄ですとジョイント部で柄が合わなくなります)
・アクリル人工大理石で作られたシンクを組み合わせる場合い、ジョイントか所をシームレスに繋げることができますのでコーキングなど必要なく清掃性がいいです。
【デメリットとして】
同じような見た目の人造石(クォーツ)に比べて柔らかいのでそれに比較すれば傷が付きやすいです。但し、樹脂で作られたカウンター材ですので ジョイント加工する際と同じ様に同材のコンパウンド(粉)で簡単に補修はできます。
・人造大理石(クォーツ)
天然石(水晶)を94%程度に樹脂を混ぜて成型された厚み12㎜から13㎜程度のカウンター材です。素材メーカーブランドとして「SILSTONE」「Ceaserstone」「fioreStone」等があります。カウンターへの加工方法はアクリル系人工大理石と同じ、カットし接着してカウンター形状に加工します。
【人造大理石(クォーツ)の特徴として】
・数種の素材メーカーから単色〜天然石風など柄は豊富で100種類以上あります。価格は高めで、一番安い柄でアクリル人工大理石と比較して、安目の柄で1.5倍程度から高い柄では3倍程度の価格差があります。
・アクリル系人工大理石と比べて、透明感のある優れた質感と機能性を持ち非常に表面硬度が高いので傷が着きにくいです。
・シンクも人造大理石でつくれるのでカウンターと一体化できます。但し下地にステンレスか人工大理石でシンクを作りその上に人造大理石を貼るという手間がかかっていて、シンクか所だけで約40万から50万円程度します。
【デメリットとして】
・アクリル人工大理石のようにシームレスに繋ぎ合わせが出来ないので、例えばL型キッチン(キッチンの種類についてはこちらご覧ください)の様に一枚物で制作、搬入できない場合は、ジョイント部に目地がでてしまいます。
・特徴である傷が付きにくい非常に硬度が高いので、普通にノコギリでは切れずダイヤモンドカッターが必要で追加で後から加工する場合は専門業者に頼むしかありません。
・セラミック
素材メーカーブランド「Decton」のWEBから説明を引用しますと「TSPテクノロジー(焼結粒子の技術)を採用ウルトラセラミックストーン。これは自然界の鉱物の編成過程に似た状況を人工的に創りだし製作します」 素材の厚みは12㎜や8㎜でこれをカット、接着してカウンター形状に加工します。コストはグレードにより違いますが、人造大理石と同程度です。
【セラミックの特徴として】
・耐熱性や耐摩耗性など優れた特性を持ち、キッチンワークトップだけなく、インテリア用途の床材・壁材にも使え、紫外線抵抗性も高く外の外装材としても使えます。キッチン単体でなくキッチン含めインテリア全体としてデザインする場合、様々なか所に使用できるので非常に有効な素材です。
・柄も30種以上あり、特に表面平滑でなく自然な素材感を打ち出した柄がありデザインの幅が広がります。
・シンクもセラミックでつくれるのでカウンターと一体化できます。但し下地にステンレスか人工大理石でシンクを作りその上にセラミックを貼るという手間がかかっていて、シンクか所だけで約40万から50万円程度します。またカウンター表面とシンク側面の取り合いをトメで納めるのは無理でイモつまりカウンター側の小口が見える納まりになります。(人造大理石であればすべてトメ納まりできます)
【デメリットとして】
・非常に硬度が高いので専門の工作機械で加工するしかなく、後からのカットや開口開けは基本的に無理です。
・硬度が高いので端部が欠け易いですので、コーナーは面取りが必要なのですが、人造大理石であれば面取り1.5㎜に対して、2㎜〜㎜程度必要になります。また平面的に見てシンク開口は、人造大理石であればピン角可能ですが、セラミックの場合はR8ほど必要になります。
・ステンレス
ステンレス(SUS304)の薄板を プレス絞り加工か板金加工でカウンター形状にしたものです。
プレス絞り加工は、一枚の平板からカウンター形状だけでなくシンク形状まで作り、仕上がりでステンレスの厚みは0.8㎜程度になります。そのプレス加工する段階で、表面にエンボス加工を施し、滑りにくい傷が目立ちにくい様にしたりもできます。但しプレス絞り加工は金型が必要で製品はコスト安いですが特殊な形状は無理なので規格品キッチン向けです。
それに対し、板金加工ステンスカウンターは1.2㎜から1.5㎜の厚みのステンレス平板をカット、曲げ、溶接ジョイントしてカウンター形状に加工します。弊社のように一点一点オーダーキッチン、オーダー洗面化粧台を製作する場合は板金加工のステンレスシンクを採用しております。
カウンターの端部は曲げるのですが、厚みが1.2㎜の材料を曲げるので角はピン角に出来ずR1.2㎜ほど付きます。裏面をVカット(プレーナー加工)して曲げてピン角を作る事もできなくはないですが、その角は厚みが0.2㎜程になり変形しやすくお勧めしません。意匠的にピン角が欲しい場合は、厚み5㎜のステンレス無板をそのままカウンターにしたりします。
表面仕上げは、「ヘアライン」「バイブレーション」のどちらかが多いです。「鏡面」仕上げは、すぐに傷が付き目立つので一般的に水平面には施しません。ヘアライン仕上げは、髪の毛のような細いラインが一方向になっている柄で、見た目はモダンなイメージになります。
ヘアライン仕上げ
バイブレーションは円弧状にランダムに研磨目をほどこした柄で、ヘアラインよりさらに傷は目立たず、ステンレスの光沢感は消えマット感のある少し落ち着いた見た目になります。加工に時間がかかるのでヘアラインよりコスト高なのと、入隅がると(シンク内とか)器具が入らずそこはバイブレーション仕上げにできません。
バイブレーション仕上げ
・メラミン化粧板
メラミンン化粧板は単色だけでなく木目や石目柄をほどこしたシートに表面をメラミン樹脂で覆った素材です。建築壁面材や扉、家具の扉やカウンターによく使われていますが、表面は耐水性や耐熱性があり硬度も高いので傷が付きにくくキッチンカウンターにも使用できます。
【メラミン化粧板の特長として】
・とにかく柄が豊富で 単色でも何十種類、木目であれば100種類以上、石目でも数十種類以上あり気に入った柄を選ぶ事ができます。
・人工大理石や人造石など他のカウンター素材と比べて格段にコスト安です。
・扉を同じ柄にするとかもしやすいのでデザインの幅は広がります。
【デメリットとして】
・当然ですが、本物の石材や木材に比べて質感は落ちます。なぜか、日本国内においてメラミン化粧板のカウンターはあまり採用されていないのですが、海外特にドイツなどでは多く使われています。性能の数値で言えば人造石やステンレスより落ちますが、通常使いにおいてなんら問題はありません。特に天板を木柄にしたい場合は天然木よりかは耐水性、耐摩耗性もよくコストも安いので検討の余地はあるかと思います。
・木材
木材といっても、無垢材、集成材、合板(突板)などがあります。
無垢材は厚み50㎜であれば厚み50㎜の天然木材を使用した材で、キッチンカウンターですとH=650〜900㎜ありますので、一枚ものからW=80㎜(巾ハギ材)ほどの無垢材は繋ぎ合わせたものまでありあます。一枚ものの無垢材となえると樹脂によりますが、材だけで数十万〜数百万しますし、常に在庫があるわけではないので、気に入った木目の材が売りに出されるまで探す事になります。W=80㎜程度の巾ハギ材であれば比較的国内在庫も豊富で手に入りやすいです。但し、無垢材は反りを考慮しないといけないので採用するに際には十分に検討が必要です。
集成材とは長さ30㎜程度のハバ材を接着剤で繋ぎ合わせて均質の長木材にしたものです。小さな部材を繋ぎ合わせているので無垢材と違い反りくいので、キッチンだけでなく家具のカウンター材としてよく使われています。
合板突板は、下地に積層材を何層か貼り合わせて反りにくくした上で、突板と言われる、木材を0.1㎜程度の薄くスライスしたものを貼り合わせて仕上げ面にしたものです。様々な樹脂の突板がありますので、見た目は一見、無垢材に見えかつ入手しやすく反りにくくした材で、家具の扉材やカウンター材としてよく使われています。
但し、集成材も合板(突板)も「木」ですので耐水性には問題があります。耐水性を上げるために、ウレタン系の塗料で塗膜を作るのですが、耐水性を上げる為と膜を厚くすればするほど木の質感や素材感は薄れていってしまいます。
常に水にさらされ熱いお鍋などを置く事が想定されるキッチンカウンターに「木」を採用する際は、機能性や耐久性には期待せず、自然の木の風味や経年変化による傷やシミなどを楽しむという考えが必要かと思います。
・その他
その他キッチンのカウンター材として使われる材として、天然石、タイル貼り、モールテックスなどの左官仕上げ、などがあります。
天然石
天然石は文字通り天然の石をカウンター材にしたもので、輸入材として国内でも手に入りますが、それほど国内在庫されているわけではないので納期に数か月納期を要する場合があります。また、「天然」ですので、無垢材と同じで一枚一枚 石目柄が違います。国内在庫品の現物見れればいいですが、そうでないカタログ写真等で石目柄で選んだ場合実際と違いますので注意が必要です。
その他注意点として、天然石の質感、重量感は変えがたい物がありますが、天然石ですのでヘアクラック等がはいっていてそこから水が浸入し割れがひどくなく、はっか(白くなる)現象が起こる懸念も念頭にいれておく必要があるかと思います。
タイル貼り
タイル貼りはカウンターは、カウンター下地を耐水性合板で作り、現場でタイル貼りします。様々なタイルメーカーから様々な柄のタイルが販売されているので好みのタイルを選ぶ事ができます。懸念点としては、他のカウンター素材であれば製作工場で制作し現場で固定して終わりですが、タイル貼りですとタイル貼りから目地材打ちで2日は施工日数がかかります。キッチンの設計段階からタイル寸法に合わせて下地や下部キャビネットの寸法を決めないといけないので、後からタイル貼にするとか、タイルの種類を後から変えるとかなると厄介です。
使用上で言いますと、タイル自体は野外にも使われている通り耐水性や耐摩耗性はいいのですが目地部は汚れやひび割れが起きやすいか所です。また、選定するタイルの種類、サイズによりますがタイル貼りカウンター面を平滑にするのは難しく多少の不陸はでてしまいます。タイルは柄の種類が豊富で高級感もありデザイン性は高いのですが、デメリットもありますので選定される際は十分に検討が必要かと思います。
左官仕上げ(モールテックス)
左官仕上げとは、職人さんがコテを使ってモルタルや珪藻土のような粉材を塗った壁・床仕上げの事ですが、そのデメリットである耐水性に劣る、ひび割れが起こりやすいという点を改善したモールテックスという左官材をキッチンカウンター仕上げに使う事もあります。モールテックスは調色でき無限の色、トーンで可能で、他のカウンター素材では表現ない鉱物表情を出せます。
注意点としては、タイル貼と同じ現場施工になるので現場での施工日程がかかるのと、モールテックスを施工できる職人さんがモールテックスの認可を受けた業者様でないと取り扱えないので施工者探しに手間がかかるという事があげられます。
2:選び方の注意点
キッチンのカウンター(ワークトップ)に求められる性能、耐熱性、耐水性、耐傷性、清掃性があげられます。
・耐熱性
火を使うキッチンでは、熱したフライパンや鍋を鍋置きを敷かずにそのまま置いてしまう事もあります。その際耐熱性が高い素材であれば問題ないですが、耐熱性の低い素材ですと変形、変色してしまう可能性があります。樹脂でできた人工大理石カウンターや木製のカウンターは上記であげた素材の中で耐熱性が低いのですので使用時は注意が必要です。逆にセラミックが非常に耐熱性が高いので安心です。
・耐水性
キッチン周りでは水を使いますので常時濡れた状態であると言っても過言ではありません。また、清掃時も水に濡れたふきんで拭きます。耐水性で言えば、木製カウンター以外はどれも必要十分と言えます。但し、人造大理石は天然の水晶が93%以上入っていますので濡れたままにして水がカウンター素材の中に染み込んでしまうと、エフロレッセンス(白華現象)が起きて白くなることがあります。特に黒系の色柄の場合が注意が必要です。
・耐傷性
ワークトップ上で様々な金属やガラス等の調理器具を使いますので、傷がつきやすい環境にあります。木製カウンターは使用時による傷なども経年変化で良しとする部材ですのでそもそも気にする必要ないかと思いますが、ステンレスのヘアラインあんどは傷は目立ちやすいので、マットな感じの雰囲気でもよければステンレスバイブレーション仕上げにした方が無難です。クォーツやセラミックは非常に硬度が高く、ほとんど傷がつきません。
但し、硬度が高い材料は表面は優れているのですが、端部などは欠け易いという特性があるので注意が必要です。また、人工大理石は表面が柔らかく傷がつきやすい素材ではあるのですが、得に傷が着いた際に黒系の色柄ですと特に傷が目立ちますので、黒系の人工大理石はお勧めしません。黒系のカウンターを希望される場合は、人造大理石(クォーツ)、セラミンク、メラミン等がお勧めです。
・清掃性
キッチンカウンターは食材や調味料など様々なもので汚れ安い場所です。人工大理石カウンターは汚れを放置していると汚れを落としにくくシミや水垢がのこってしまい、水で拭くだけでは取れなくなる事があります。原因は人工大理石は顕微鏡レベルで見ると表面がデコボコしておりそのくぼみに汚れが入りこんでしまうからです。ただしクレンザーのような小さな粒子のある洗剤を使用すると表面を研磨しますので付着した汚れは取れる事もあります。
キッチンワークトップに求められる性能つまり耐熱性、耐水性、耐傷性、清掃性について、それぞれの特性についてお話しましたが、特性を理解した上で通常の使い方で日頃から清掃を心がけておけば、どの素材でも基本的な性能はクリアされていると考えていいです。
キッチンは特にアイランドキッチンは、ダイニングキッチン空間・リビング空間の中心となる存在で全体のインテリアの主軸になると言っても過言ではありません。ですので素材を選ぶ際は、デザイン性の観点から選定しても特段問題はありません。デザイン性の観点と申しましても、カウンター素材だけも見るのでなく、キッチンキャビネットの意匠や床、壁天井の意匠等全体を考慮して決める事重要で、理想の素敵なキッチンダイニング空間をつくるコツです。カウンター材だけ見て素敵だなと思っても、部屋の雰囲気にあっていないと意味がありません。
そういう意味でキッチンだけをオーダー製作される場合であれ、建築設計を進める早い段階から、部屋の雰囲気、床、壁材を含めて相談・ご提案でいる業者やデザイナーに相談するのがベストかと思われます。
3:まとめ
キッチンをオーダー製作される上で、ダイニングキッチン空間・リビング空間のインテリアを構成する上で重要な要素である、キッチンカウンター(ワークトップ)素材の種類をその特性についてお話してきました。
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