脱衣所から洗面化粧台を独立して廊下やリビングに設置するメリット
皆さまのご自宅において、「洗面化粧台」はどこにありますか?
恐らくほとんどの方が、「浴室の横の洗面・脱衣室にある」と答えるのではないでしょうか?戸建であれ集合住宅であれ、いわゆる分譲住宅のほとんどが洗面化粧台は浴室の横の洗面・脱衣室にあります。
理由としましては、生活動線を考える上で、浴室・洗面は切っても切れない関係ですし、建築・設備構造から見ても「水まわり」は極力一か所に集めたほうが合理的だからでしょうか?
しかし、ライフスタイルの多様化で生活動線も様々になり、洗面化粧台が洗面・脱衣室にあるのがどの家庭にとっても、望ましいプランニングとは言えない時代になってきていると思います。
今回は「洗面化粧台」を独立させ廊下やリビングに設置する際のメリット・デメリット、注意点等についてお話します。
▽洗面化粧台・洗面所に関する記事も併せてご覧ください。
【目次】
4:デメリット?気を付けたい事①:生活感を出さない生活スタイル・洗面家具が必要
5:デメリット?気を付けたい事②:設置する場所は建築的制約が出る
1:アウトベイシンスタイルとは?
「アウトベイシンスタイル」という言葉を御存じでしょうか?「アウト」=「OUT」=「外」 「ベイシン」=「BASIN」=「洗面器」という意味で、水まわりスペースの外に洗面台を配置するプランニングの事で、ここ数年でビジネスホテルやシティホテルで取り入れられています。
ビジネスホテルであれば 900x1200程度のスペースにトイレ、手洗い、バスタブのいわゆる3点式UBを設置されている事がほとんどでした。
アウトベイシンスタイルでは、洗面台を独立させ入り口から部屋までの通路や部屋のデスクなどに洗面器を配置する事により、トイレや濡れたままのバスタブの横にある小さな洗面台でなくベット脇の洗面化粧台で、雰囲気のいいデザインが可能になり、広々として、顔を洗う時やメイクアップの時間を気分よくゆったりと過ごせるというメリットがあります。
そうでないホテルとの差別化として、部屋の広さや設備機能だけなく、「アウトベイシンスタイル」である事を売りにしているホテルも多々見受けられます。
アウトベイシンスタイルとは、言い換えれば、洗面化粧台をトイレやバスタブの「水まわり」カテゴリーに組込むのでなく、ベットやデスクなどの「リビング」カテゴリーに組み込むという事になります。この「アウトベイシンスタイル」はホテルだけでなく、ご自宅の住宅にも取り入れる事ができメリットも多々ありますので、新築やリノベーションされる際は一度ご検討されてもいいかもしれません。
では、次にどんなメリットがあるのか見ていきましょう。
2:メリット①空間効率の向上
浴室の横にある洗面・脱衣所から洗面化粧台を独立させる事により空間効率が上がります。
空間効率が上がるとは、同じ住居スペースにおいて「今までの洗面化粧台よりより大きな洗面化粧台が置けるようになる」 又は「同じ大きさの洗面化粧台であればリビングやベットルームを広くする事ができる」という事なのですが、一緒に詰め込んでいた洗面・脱衣所から洗面化粧台を独立させて分けたら余計にスペースがいるのでは?と感覚的にも思うかもしれませんが、具体的なプランニング事例を元に空間効率が向上する事をご説明いたします。
・今までの洗面化粧台よりより大きな洗面化粧台がおけるようになる
図面Aは1LDKの浴室に隣接した洗面・脱衣室に洗面機能、洗濯家事機能、脱衣室機能を持たせたプランです。この場合、洗面化粧台のサイズは最大でも900㎜程度しかとれません。
【図面A】
このプランから、浴室に隣接した部屋は洗濯家事機能と脱室機能の限定し、洗面化粧台を廊下に面して配置したプランが図面Bです。
【図面B】
するとどうでしょうか?脱衣室の有効スペースは1畳から半畳と小さくなりますが、浴室脱衣室は一人で使用するプライベート空間ですのでそれほど使いにくくはなりません。
それよりも洗面化粧台はW=1600とれてツインボール洗面も可能ですし、スペース効率が上がったのでトイレ内にも奥行300㎜の手洗いを設置する事ができました。
なぜリビングやベットルームのスペースをそのまま維持し洗面化粧台サイズを大きくする事が出来たのかと言うと、廊下スペースに洗面化粧台使用時のスペース(立位置)を割り当てたからです。
廊下は常に人がいるスペースではありませんし、洗面化粧台もずっと使う場所でもありません。それをうまく組み合わせて空間効率を向上させたわけです。
「洗面化粧台を使用時に他の方が廊下を通りにくい!」と思う方もいらっしゃるかと思いますが、洗面化粧台は廊下のラインから少しセットバックしていてその前の廊下幅は広くなっていますし、もっと洗面台前を広くしたいならトイレを元々のサイズ程度にして、(D=300㎜の手洗いはやめて)もっと洗面台をセットバックして配置すれば問題は解決されます。
【図面C】
・同じ大きさの洗面化粧台であればリビングやベットルームを広くする事ができる
次に、独立させる洗面化粧台を廊下でなくリビングに配置したプランが図面Dです。
【図面D】
上記の事例は、リビングに洗面化粧台を配置すると言いましても、独立させた洗面化粧台を配置するのでなく、リビング収納家具(TVボード等)に洗面機能を組み込んだ形なのですが、図面Aと比較してリビングスペースが広くなっているのがお分かりいただけたかと思います。
リビングに洗面化粧台を配置するの記事は新しいバルスームの形にも詳しく書いてますので、合わせてお読みください。
3:メリット➁使い勝手の向上
上記で洗面化粧台を独立させる事により空間効率が上がり、より大きな洗面化粧台が置ける事、リビングやベットルームを広くできる事がお分かりいただけたかと思います。では、空間効率が上がる以外、つまり使用する際のメリットは何かあるのでしょうか?
次に、洗面化粧台を洗面・脱衣室から独立させる事により使い勝手が向上する点について見ていきたいと思います。
・家族複数人での同時使用が出来るようになる。
洗面脱衣室に洗面機能・脱衣室機能・家事室機能をまとめた場合、家族一人が洗面脱衣室や浴室を使用する場合、占有してしまうので他の家族が使えません。
【図面E】
洗面化粧台を広くしてツインボールにする場合、この様に誰か一人が洗面脱衣室・浴室を占有してしまう生活スタイルならツインボールはあまり意味をなさないの場合があるので注意が必要です。
洗面化粧台を洗面脱衣室から独立させる事により、誰かが浴室を利用している時でも洗面所を使えるようになり使い勝手が向上します。
【図面F】
・生活動線を考慮し適切な場所に洗面台を配置できる セカンド洗面いらず?
ここ最近 洗面化粧台を製作販売するメーカー側もまた住まわれる方も「セカンド洗面」という言葉がもてはやされています。
「セカンド洗面」とは文字通り2個目の洗面という事で、一般的に住戸において浴室横の洗面・脱衣室に洗面化粧台が設置されているのですが、どちらかと言えば洗面所は裏方のプライベートスペースですので、来客者用に二個目の洗面化粧台を設ける、コロナ過の影響で帰宅してすぐに手洗いうがいが出来る様に玄関に洗面化粧台を設ける、寝る前やメイク時に水を使える様ベットルームに洗面ドレッサーを設ける、陶芸や絵画など「水」を使う趣味をお持ちの方向けに趣味部屋に洗面台も設ける等考えられます。
我々も兼ねてより、それぞれのライフスタイルに合う場所に自由に「水」を設けて住生活を向上させる提案を行っており、セカンド洗面の有効性を否定しているわけではありません。これらの提案は下記リンク記事をご覧ください。
しかし、忘れてはいけないのは、目的はライフスライルにあった生活動線において便利に「水」を使用できるようにする事であり、2つや3つ洗面化粧台を配置する事が目的でないという事です。
本記事は、「洗面化粧台を独立させて設置する事のメリット」についてですのでその観点からのご提案です。話を戻しますと、帰宅してすぐに手を洗いたいので玄関近くに洗面台を置くとなるとどうでしょうか?図面Aのプランニングから「セカンド洗面」という観点から考えると、図面Gのように玄関脇の収納スペースを壊して洗面台を配置するというプランが考えられます。
【図面G】
この場合のデメリットは半畳の収納スペースがなくなる、戸建て新築であればそれほど問題はないですが、戸建や集合住宅リノベーションの場合、既存の水まわりスペースから離れているので給排水ルートの設置が大変で、床下スペースがない集合住宅の場合不可能な場合もあります。
それに比べて、「洗面化粧台を独立させて配置」という観点から考えた廊下に面して洗面化粧台を独立配置したプランですと、玄関脇の収納も壊す必要がなく、既存の水まわりスペースとほぼ同じ位置ですので給排水ルートの設置も簡単に出来て、家に帰って来て玄関からリビングまでの動線に洗面台があるので、目的は果たせたと言えるのではないでしょうか?
【図面H】
次に、来客者用にリビングに洗面化粧台が欲しいという場合も、リビングにセカンド洗面を置いて解決する方法もありますが、洗面化粧台を独立してリビングに設置し共用させてひとつの洗面化粧台で解決するという方法もあります。
【図面D】
ここまで、脱衣所から洗面化粧台を独立させて廊下やホールに設置する事によるメリット
・空間効率の向上
・使い勝手の向上
についてお話してきました。良いこと尽くめの様に見えますが、デメリットや気を付けないといけない事はないのでしょうか?次にそれらについて見てゆきましょう。
4:デメリット①:生活感を出さない生活スタイル・洗面台家具が必要
突然ですが、ご自宅の洗面所(洗面台回り)というと、ごちゃごちゃしてて生活感出てますよね?「いえ、私の洗面所はホテルのパウダールームのように整理整頓されてて綺麗です」と言われる方もいるとは思いますが、ほとんどの方は生活感溢れる洗面空間でしょう。
どうして洗面・脱衣所は生活感が出るのか?朝の忙しい時間の生活や洗濯などの家事をする場所ですので当然なのですが、理由をあげてみますと
・タオル、石鹸、歯ブラシ、コップ、着替え、脱衣カゴ….とにかく置いてる物が多い
・朝の通勤・通学前や帰宅してからの洗濯など、慌ただしい時間に使用するので片付ける暇がない
・玄関やリビングは来客者が来られる場所であるが、洗面・脱衣所は家族しか使わないプライベート空間なので、後回しになってしまう
・リビングやベットルームのインテリアは拘り内装や家具に拘ってるが、洗面・脱衣所のインテリアに拘っていないのでそもそも気にしてない
等でしょうか?
さて、洗面化粧台を洗面・脱衣室から独立して配置する場合に、これら生活感がそのまま移動するとなるといくら空間効率と使い勝手が向上しても、廊下やリビングの「美」が損なわれるのでお勧めしたりしません。それら生活感は排除できるから本記事でお勧めしているわけです。
一つ一つ見ていきましょう。
・タオル、石鹸、歯ブラシ、コップ、着替え、脱衣カゴ….とにかく置いてる物が多い
→洗面機能を独立させるわけですから、洗面で使う物だけになるので置く物はそれほど多くはなりません。言ってみればホテルの洗面所ルームと同程度の物で済みます。ホテルと違ってタオルやアメニティのストック、日常品も家族分いるわけですがそれは見た目や機能に拘り洗面化粧台をデザイン・製作すれば問題は解決されます。
ご自宅でホテルライクな洗面所を手に入れたい方は下記記事もご覧下さい。
ホテルライクなパウダールーム(洗面所)をご自宅で実現する方法とは?
・玄関やリビングは来客者が来られる場所であるが、洗面・脱衣所は家族しか使わないプライベート空間なので、後回しになってしまう
→プライベート空間からオープンな空間に洗面化粧台がくるわけですから「まっいっか」にはなりにくいかと思います。但し「自ら整理整頓や綺麗に使う」心がけは多少必要です。
・朝の通勤・通学前や帰宅してからの洗濯など、慌ただしい時間に使用するので片付ける暇がない
→洗濯機能は元々の場所なので、洗面機能だけですが、使いやすい整理しやすい洗面家具にすれば解決されるかと思います。
・リビングやベットルームのインテリアは拘り内装や家具に拘ってるが、洗面・脱衣所のインテリアに拘っていないのでそもそも気にしてない
→洗面台を廊下やホール、リビングに面して配置する訳ですから、それらの空間と統一されたデザインでオーダー製作する事になるので独立した洗面化粧台はお客様の理想の形になるので洗面所回りのインテリア・雑貨類も拘るようになるかと思います。
以上のように、ライフスタイルにあった機能的で使いやすく洗面化粧台をデザイン・製作すればハード的には解決されます。既成の洗面台よりかはコストはかかりますが、より快適に過ごすことが出来る水周り空間を実現することが出来ます。
それに、多少の「心がけ」があれば、独立した洗面所まわり生活感が出る事はないかと思われます。
洗面所を彩る雑貨はこちら
5:デメリット?気を付けたい事➁:設置する場所は建築的制約が出る
住宅の平面図だけ見て、好きな位置にどこでも洗面台を独立して配置できるわけではありません。それは、洗面化粧台は置き家具と違い、給排水設備が必要で壁内や床下に設備配管スペースが必要だからです。
木造の新築戸建であれば、ある程度自由に配置する事はできますが、配管ルートの設計やあまり合理的でない配管ルートを取らざるを得ない場合は、無駄にコストがかかってしまう場合があります。
木造のリノベーション・リフォームでもある程度自由な場所に設置する事は可能ではありますが、単純に洗面台を設置するにしても、既存の給排水管までの設備ルートが必要ですので大がかりな工事になってしまう場合があります。
玄関脇にセカンド洗面を設置する事例で言えば、玄関脇の床、トイレ内の床、洗面所の床をはがして給排水管を設置する事になります。(注:野外に給排水管を設置するという方法をとればこれらの床ははがさないと済みますが野外スペースの問題や露出配管になってしまいます)
【図面I】
RC造集合住宅の場合は、一般的には水まわりスペースのみ下がり躯体になっていて配管スペースを確保しておりリビング等は下がり躯体でないので、洗面化粧台を配置できるか所は限られています。
【図面J】
【図面K】
では、上記でお話しましたリビングに洗面台を置くプランはRC造集合住宅のリノベーションでは出来ないのか?というと方法はあります。
【図面L】
【図面M】
洗面化粧台を設置するリビング側は下げ躯体になっておらず床下スペースがないので、洗面化粧台を設置する壁面収納内に配管ルートを確保すれば解決されます。
この様に洗面化粧台を設置するには、給排水管が必要なので、設置する場所には建築的制約を受けるのですが、工夫次第によっては解決できる事もあるので、洗面化粧台を独立して配置したい場合は、専門家と相談しながら住宅のプランニングと洗面化粧台家具のデザイン・設計を同時に進めてゆくのが望ましいです。
6:まとめ
以上、ライフスタイルによっては、脱衣所から洗面化粧台を独立して廊下やリビングに設置するほうがメリットがある、そしてその際に注意しなければならない注意点、デメリットについてお話しました。
なにも「洗面所」は浴室横にある必要はない!という事に共感いただけましたら幸いです。
宜しければ、洗面化粧台・洗面所に関する記事も併せてご覧ください。
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