住宅プランニングにおける洗面所の配置について〜生活・家事動線から
住宅のプランニングにおいて「洗面所」の配置はどのように考えるべきなのでしょうか?
実際のところ、敷地の面積、形状、道路面(エントランス位置)、必要なキッチンダイニングスペース、リビングスペース、居室の数、大きさ、収納スペース、またそれらの関係性、法的規制、設備配管等の合理性など様々な要因で決定される事になるのですが、今回は「洗面所」を主役と捉え他の部屋との関係性はどうあるべきなのか?見ていきたいと思います。
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【目次】
1:生活動線〜LDKや居室など生活スペースとの関係性
寝る、起きる、食事をする、寛ぐ、楽しむといった生活動線について見ていきます。
日本において、住宅の大きさを示す目安として「2DK」「3LDK」等と表現します。前者は2つの個室とダイニング・キッチン。後者は3つの個室をリビング、ダイニング、キッチンがあるという事です。
一方西欧においては、住宅の大きさを「3Bedroom 2Bathroom」と示します。つまり、三つの個室と2つのバスルームという事です。※海外において、「洗面所」「浴室」は一体なので「Bathroom」と表現します。
参考平面図は下記です。
つまり、MBR(マスターベットルーム)に夫婦二人で専用のバスルームがあり、2つのBR(ベットルーム)をそれぞれ子供が使い、共用のバスルームを使うという事です。西欧において、たとえ家族でも子供でもプライバシーを尊重する事から各個人に専用のプラベート空間であるバスルームが用意され、「洗面所」へのアプローチは個室の寝室からという事が一般的です。
日本国内の西欧人向け集合住宅でもこのようなプランニングが多く採用されています。
一方、日本国内において、各個人に専用のバスルームを用意される事はほぼありません。スペースの問題、コストの問題、湯船につかるという文化、小さなお子さんは親と一緒に入るという生活習慣のせいでしょうか。したがって、日本において、「洗面所」「バスルーム」は家族の共用スペースとなりますので、必然的にダイニング、リビングなど共用スペースからのアプローチになります。
その上で、それぞれのライフスタイルに合わせて、例えば湯上りにリビングで寛ぐ習慣なのであれば、リビングからのアプローチにする。
湯上り後は寝る準備ができているので寝室へ直行したい、朝起きたら洗面所に直行して身支度をしたい等という習慣なら、それぞれの個室へ近いアプローチにする。
等検討し採用するのがいいかと思われます。
また、よりプライベート空間として使いたい場合の解決策として、アプローチを個室と共用部からの2つ用意するという方法があります。
共用アプローチとプライベートアプローチを用意する事により、洗面所・バスルームを共用スペースかつプライベートスペースの性格を持たせたわけです。ご夫婦だけの生活やまだお子さまが小さい時などのライフスタイルに向いているかもしれません。
本記事は、生活動線における「洗面所」と他の部屋との関係性とアプローチについてですので、割愛しますが、「洗面所と脱衣場を分ける」「洗面所を閉じたスペースとしてでなくオープンなスペースに設置する」「複数の洗面機能を作る」など新たな洗面所のあり方もございます。
以上、生活動線における、洗面所への共用アプローチ、プライベートアプローチの観点から洗面所の配置について見ていきました。次に家事動線の観点から洗面所の配置について見ていきたいと思います。
2:家事動線〜家事スペースとの関係性
洗面所は生活動線だけでなく、家事動線の観点からも配置を検討する必要があります。
具体的に言いますと
1:洗面所(脱衣所)で衣類を脱ぎ、タオルを使用
2:それを洗面所の洗濯機で洗濯して
※洗面所とは別の場所に洗濯機を置くプランニングもありますが、衣類を運ぶ必要があるので流れ的には同じ事です。
3:日当たりのいい外で干して
4:アイロンをあて、たたんで収納する(洗面所)
という一連の家事の流れにおいて、何度も関係するのが「洗面所」です。
洗面所の配置により 機能的な家事動線が機能的かどうか決まるといっても過言ではありません。
また、直接はこの一連の家事仕事には関係ないですが、キッチンでの家事の合間に洗濯をする等もありますから、キッチンとの関係性、動線も見てゆく必要があります。
端的に言うと、それらの動線距離は近ければ近いほうが便利で機能的で、下記プランニンは家事動線においては理想形と言えます。
・「脱衣カゴ・衣類収納スペース」「洗濯機やアイロン家事スペース」「洗濯干しスペース」が最短距離でつながっており
・キッチンなどの他の家事スペースからの距離も近く
・家事動線と生活動線が分れていてバッティングしない
この三点が確保されたプランニングです。
実際において
・集合住宅であれば、洗濯を干すベランダ側に水回りスペースを配置するには床下配管スペースの関係で希であり
・戸建て住宅においても1Fに洗濯干しスペースを取れない
・2Fにキッチンや浴室関係の水回りを配置するのは施工・コスト的な面で非合理等の理由があり
この通りのプランニングできるとは限りません。
しかし、もっとも便利な配置を知っておき、現実の敷地において、取り入れられる範囲で、どれかの要素を取り入れたプランニングをするのが最善を手に入れるコツです。
例えば、集合住宅であれば、洗濯干し場のベランダまでの距離は諦めて他の要素は取り入れる等です。
3:換気、採光について
洗面所は湿気や臭いが溜まりやすく、いつも清潔感を保ちたい場所ですので換気や採光用に注意を払う必要があります。集合住宅などは、外壁面に接する部屋は基本的に居室にしますので、自然換気や自然採光は難しく機械換気に頼る事になります。
戸建て住宅においては、外壁面が多いですし、むしろ外壁に面して配置される事が多いです。ですので、換気・採光窓を設置するのは容易なので極力つけるべきです。但し、プライバシーを重視する場所なので、その点を十分配慮して窓の位置、大きさ、ブラインド等の目隠しを設置するといいでしょう。
4:戸建て住宅におおて1F2Fどちらがいいのか?
戸建て2階建て住宅を想定して、洗面所(浴室)は1Fと2Fのどちらがいいのでしょうか?
まず、メリット・デメリットについて言いますと1Fに設置のほうが、給排水管は地面から立ち上がってきますので1Fの方が合理的でコスト安になります。UBであれば防水工事の必要がなく2FでもUB工事自体はそれほどコスト面では変わりませんが、床下配管スペースの関係で直下の部屋の天井高は低くなります。
2Fの方が外からの視界を制限できプライバシーを確保しやすいので採光や換気窓設置の面においては有利です。
それらの事を踏まえた上で、先ほど申し上げました生活動線つまり、共有空間(LDK)からのアプローチを優先するのか?プライベート空間(個室)からのアプローチを優先するのか?そして、家事動線が極力最短距離になるようにする事を考え、1Fの洗濯物を干せるスペースはとれるのか?など考慮しコスト比較で決めるのがよろしいかと思います。
例えば、2Fにしか洗濯物を干すスペースがないが、家事動線は最短にしたく、共用スペースからのアプローチ重視でいい場合は
1Fに居室3つとエントランス
2FにLDKと洗面所とバスルーム
のプランニングで解決されます。
しかし、プライベートスペース(個室)からのアプローチを重視したく、かつ家事動線も最短にしたい というのは不可能です。なぜなら、キッチン・ダイニングと洗面所・浴室と3つの個室すべてを一層配置にするのは本設定(2F建て戸建て)では無理だからです。
1Fに2つの個室
2FにLDKと洗面所(浴室)と1つの個室
のプランニングで1部屋の個室だけアプローチを確保するか、
1Fに洗面所と3つの個室
2FにLDK
のプラニングで家事動線は諦める
など、どれかを割り切らないといけません。
5:まとめ
以上、生活動線、家事動線から見た住宅プランニング「洗面所」の配置について見ていきました。
敷地が十分あれば、予算が十分あれば、すべての要望を実現するプラニングは可能ですが、実際そのような事はなく、敷地や予算は限られています。その中で、自らのライフスタイルと照らし合わせどう折り合いをつけてゆくのか住宅のプランニングであり、絶対的な正解は存在しません。
しかし、住む人にとっての最適解は存在していると思われます。この記事を読んでいただき、理想のライフスタイイル、理想の洗面所空間が実現すれば幸いです。
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